- トップページ
- 取扱業務
- 1.企業法務
- 各種文書の作成
- 労働事件
- 倒産処理事件 [ 事業再生等 ]
- 法務監査 [ 法務DD ]
- 2.法人設立
- 3.民事事件
- 各種契約に伴う紛争
- 離婚
- 相続
- 後見
- 損害賠償請求
- 4.行政関係
- 5.医療関係 [ 医療事故等 ]
- 6.教育・学校関係
- 7.知的財産法関係
- 8.刑事事件
取扱業務
行政関係について
- 自治体に要求されるコンプライアンスについて
(1)コンプライアンスとは何か?
コンプライアンス(compliance)とは「法令遵守」を意味する用語である。しかし「法令違反を犯さないこと」のみと考えるのは誤りであり、関係社会規範(道徳規範、倫理規範)の遵守も含む。また、「法令」は、法律や政令・省令のみでなく、業界のルールや企業倫理をも含めた広い意味で用いられている。
(2)コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった背景と現状
近年、「企業の社会的責任」(CSR=Corporate Social Responsibility)が叫ばれている。企業の目的は利益の追求であるが、利益のためなら何をしてもよいというわけではない。企業が違法行為や反社会的行為を行って、消費者や社会の信頼を失う事態が頻発したことから、コンプライアンス違反に対する世間の目は厳しい。法令の背後には必ず何らかの社会的な要請があり、その要請を実現するために法令が定められている。
だからこそ、企業が法令を遵守することが社会的要請に応えることにつながる。また、今日では、反社会的勢力の排除も重要課題である。
(3) 自治体の場合はどうか?
ア 自治体において法令遵守が要求されることは、以下の規定からしても当然である。- ① 憲法15条2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」
- ② 地方自治法第1条の2、第1項 「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」
- ③ 同法第2条第2項 「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。」 同条第16項 「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」
イ 服務の根本基準- ① 地方公務員法第30条「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」
- ② 同法第31条「職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。」
- ③ 同法第32条 「職員は、その職務を遂行するに当たって、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
- ④ 同法第33条「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」
(4)しかし、企業同様に社会的要請に応えることが、コンプライアンスであることを考えるなら、自治体に要求されるコンプライアンスとは、自治体職員が、①住民のために、②組織として一体となって対応すること、が「自治体におけるコンプライアンス」であると考えるべきである。
自治体は企業以上に重い社会的責任を担う存在なのであり、コンプライアンス違反が生じないように常に最大限の注意を払わなければならない。具体的には、以下の点に留意しなければならない。
- ① 法令違反を犯さないこと
- ② 住民のためになることを行動原理とすること
- ③ 説明責任を果たすこと
- ④ 公平、毅然とした対応→クレーマーに屈しない
- ⑤ 事実の隠蔽をしないこと
- ⑥ 住民の信頼を損なわないこと
(5)地方公務員に求められる行動
- ① 全体の奉仕者としての公務員に求められているのは公益の実現であることを自覚する→自己の利益を図るなど論外!
- ② 公正・公平な職務執行を行うこと→住民に対してはもちろんのこと、役場内でも然りである。
- ③ 公私の別を自覚する。
- ④ 自分の行動を客観的に見る→役場内の常識は世間の常識とは限らない!
- ⑤ 私的時間の行動にも気を配る→一私人として行動する場合であっても、公務員が社会人として問題のある行動を取れば住民の信頼を裏切ることになり、公務への信用性が傷つく
(6)ところで、さらに一歩踏み込んで、市町村の果たすべき役割について検討したい。
浦安市の市制施行前の漁港管理者である浦安町が漁港水域内の不法設置に係るヨット係留杭を法規に基づかずに強制撤去する費用を支出したことが違法とはいえないとされた事例(最高裁平成3年3月8日判決 判例時報1393号83頁)がある。
1審及び2審判決は、浦安町には鉄杭撤去の権限はないので(権限があるのは、法令上は県知事である。)、鉄杭の撤去は違法であるとして、撤去のための請負工事代金支払を違法としたが、最高裁は、行政代執行は違法であるが、船舶の航行の安全を図り、住民の危難発生という緊急事態に対処するためのやむを得ない適切な措置であって、民法720条の法意に照らして判断し、違法とは言えないとした。
法令の背後には必ず何らかの社会的な要請があり、その要請を実現するために法令が定められている。この意味において、住民の安全を守るという社会的要請に沿った行動をした浦安町の行為は是認されるべきであるし、最高裁の判断は、ある意味で当然といえよう。要は、自治体に要求されることは何かという目的に基づいた、常識に従った行動こそが求められるのである。市のトップである市長たる者は、常に「自分は市民のために行動している!」という市長としての矜持を保っていていただきたい。そうすれば、どのような批判にも、自信を持って堂々と対応できるはずである。これこそが首長、自治体に要求されるコンプライアンスであると考える。 -
自治体における危機管理について
(1)危機管理は、以下の2種類に分けて考えるのが最近の多数説である。
-
ア リスクマネジメント
危機事態の発生を予防するためのリスクの分析方法であり、危機を予測し、防止策を実施することにより発生の確率を低くしたり、発生した場合の損失を少なくすることを目的とするものである。
-
イ クライシスマネジメント
危機事態の発生後の対処方法であり、速やかな対応により、被害を最小限度にとどめることを目的とするものである。
- ア 平常時
- ① 予防策を立てること
- ② 職員に対して危機管理の意識と知識を浸透させる
- イ 緊急時
- ① 対策をとっていても事件は発生するので、発生した場合の被害をいかに最小限にとどめるか
- ② 事件発生の場合の迅速な説明責任を果たすこと等により、信用失墜を少なくすること
- ウ 収束時
- ① 再発防止策や責任の所在を明らかにすること
(3) 自治体における危機とは?- ア 自然災害、人為的災害危機
地震、津波、台風、集中豪雨、土砂災害など、災害は何時起きても不思議ではないし、地震と台風が全く関係のない自治体は日本のどこにもない。昨今の、予想できない集中豪雨、土砂災害の状況からは、市長がどのタイミングで住民に避難勧告・避難指示を出すか等について、綿密な事前対策を講じておく必要がある。
- イ 自治体で起きる事故
- ① 職員の行為に起因するもの→職員の不祥事発生時、汚職、官製談合、公金着服、セクハラ、パワハラ
- ② 自治体の施設で起きるもの→事故発生時、道路、学校での事故
- ③ 自治体の業務に関して起きるもの→モンスタークレーマーが出現した時、住民訴訟を提起された時
(4) 危機事態発生後において、マスコミ対応は重要なポイントを占める。
ア 現在、社会における原動力は、人、物、金そして情報であり、マスコミは重要な地位を占めているし、市町村職員はあまり実感がないかもしれないが、マスコミは、市町村を権力と見なしているので、住民保護の観点(?)に立つマスコミと自治体は対局軸にあるといえる。
イ マスコミ対応で具体的に問題となるのは、不祥事等が発生した場合に、記者発表、記者会見をどのタイミングで行うべきかということである。私の経験では、事実がマスコミに伝わると、マスコミは何とかして、他社に先駆けて情報を入手しようと必死になり、いじめ事件などでは、学校の中まで入り込んで撮影したり、教育長や校長の自宅まで押しかけて、何とかコメントを入手しようとする。そのような場合に、関係者間で事前の協議もなく、安易にインタビューに応じてしまうと、関係者間のコメントの内容が微妙にずれてしまって、マスコミや住民の不信感が増幅することになる。従って、住民やマスコミから関心を持たれる事案(人命に関わる事故の発生、職員の不祥事等)については、自治体側から日時と場所を指定して記者会見を開くべきであると考える。マスコミからの取材に答えて不祥事等を明らかにするのでは、事実を隠蔽していたと見られる危険があるから要注意である。
ウ 記者会見にはトップが出るべきであろうか、それとも実務担当者だけが出るべきかという質問もよく受けることがある。記者会見を開くべき事案が発生した場合には、まずはマスコミ対応窓口を決めることが必要であり、マスコミからの連絡対応は首長以外の特定の人間が行うべきである(総務部長か?)。しかし、それは、記者会見以外の場面でのことであり、記者会見には首長自らが出席することで、住民に対する説明責任を果たすことになる。記者会見において、個別具体的な質問全てに首長が答えることは不可能であるが、たとえば職員の不祥事事案の場合には、記者会見冒頭における不祥事の内容の説明、再発防止策、住民への謝罪については、首長自らが行うべきであり、質問についても、基本的な事項については回答できる程度に事前に担当職員から十分なレクチャーを受けておくことが必要となる。
細部に渡る質問事項に対しては、部下に回答させても問題はないが、基本的な事項(不祥事の内容、不祥事開始の時期、当該職員の主な経歴等)については、首長自らが回答できるようにしておくべきであり、そのことだけで住民の信頼を得ることができるのである。
(5) 訴状が突然届いても驚く必要はない。
原告の請求内容と請求の理由を記載した訴状と、「〇月〇日の〇時に第1回口頭弁論期日が開かれるから千葉地方裁判所に出頭せよ。口頭弁論期日の1週間前までに、訴状の内容に対する被告の意見を細かく記載した答弁書を提出せよ。」という呼出状が市町村に届くと、ほとんどの職員はパニックに陥る。何故ならば、訴状等が届いた日から指定された口頭弁論期日までは、1ヶ月足らずの時間しかない場合ほとんどであり、さらに答弁書提出期限となると、3週間程度しかないことがあるからである。
「呼出状に記載された口頭弁論期日には必ず出頭しなければならないのか?」との質問をよく受ける。確かに裁判所からの呼び出しを無視した場合には、いわゆる欠席判決、つまり原告の言い分を全て認めたものとみなされ(擬制自白 民事訴訟法179条))敗訴判決となるが、裁判期日に出頭できない場合には、第1回期日は、答弁書を提出しておけば、擬制陳述(民事訴訟法158条)となるので、出頭の必要性はない。第1回口頭弁論期日は、裁判所と原告側の都合だけで一方的に決められたものなので、被告側が、無理に日程を合わせる必要はないのである。
また、呼出状には、口頭弁論期日の1週間前までに、訴状記載事実に対して具体的な認否をせよという記載があるので、訴状と呼出状を受け取った市町村職員は慌ててしまうのであるが、口頭弁論期日の1週間前までに詳細な答弁をまとめて提出する必要はなく、とりあえず、原告の請求については争う旨の記載をした簡単な答弁書のみで足りるので安心して欲しい。また、事案にもよるが東京地裁に呼び出された場合でも、地元の裁判所で審理してもらうことはできる。
必ず市町村長本人が、裁判所に出頭しなければならないわけではなく、弁護士への委任あるいは指定代理人の活用(地方自治法153条)で対応可能である。
これまで自治体職員が裁判に関わることは少なかった。日本人の特性として、裁判まですることについてためらう傾向があったが、最近では国民全体が、「司法による解決、裁判による決着」を望む傾向となっており、司法改革の一環による弁護士数の飛躍的増大により、自治体が被告となる訴訟事件は増大するものと予想される。また、公営住宅賃料滞納者に対する明渡訴訟提起が必要となる事案も増加傾向にあるので、自治体職員が裁判所と関わる機会は増大することが予想される。もちろん、揉め事は起こらないことが理想ではあるが、起こりうる危機として、訴訟提起された場合の対応について、事前に研修しておくことが有益である。
(6) クレーマー対策について
ア 自治体の役割は、①住民が主体となり、住民から集めた税金、保有する財産を受益者たる住民のために有効活用すること、②より良き行政サービスを提供し、責任をもって結果を実現し説明責任を果たしていくことであるが、住民の中には、住民の意思や人権問題と称して、自治体の持っている権限や財産を自分たちの利益に活用しようとする人間たちが存在する。
住民全体の意思を無視し、住民の負担を考えず、特定関係者の意向に従って利益供与を行うというその場限りの対応をしてはならない。
従って、特定関係者の排除、不当要求対策は不可欠であり、①政策意思決定の面における排除の必要性、②政策の実行過程たる基本事業の策定過程・具体的な事務事業執行過程における排除の必要性を認識し、住民の福祉のため健全な行政を実現し、公正な社会を作らなければならない。
イ 近時、「行政対象暴力」が増大している。行政対象暴力とは、暴行、威迫する言動、その他の不当な手段により行政機関に対し、違法または不当な行為を直接または間接的に要求し、行政の公正・中立を害する行為である。公務員個人に向けられたものであっても、主として行政の公正を害する目的であれば、含まれる。要は、公務員に対して、作為や不作為を問わず、職務上の一定の行為を求めるための①暴行 ②脅迫 ③その他不当要求行為、である。
「Claim」とは、主張、要求、請求であり、「Claimer」とは、主張者、要求者のことである。直ちに、苦情や理不尽な要求を意味するわけではない。頭ごなしに「クレーマー」だと決めつけるのではなく、まずは相手の話をよく聞き、話の内容を確認することが必要である。要は、業務に支障をきたすような迷惑行為をする人、職員に危害を加える人、金銭目的の人と正当な主張をしている人を見分け、一線を越えた場合の対応を検討する必要があるのである。一線の見分け方としては、まず、要求実現型であり、最終目的は金であり、金のためなら何でもやるタイプとパーソナリティー型、自分の行動によって他人が苦しむ姿を見て優越感に浸り、自己の存在感を確認するタイプがあるが、それ以外にも、粗野、乱暴な言動をする人間や庁舎内に長く居座る行為、長時間の面会を要求する行為をする人間については一線を越えたと見なし、全庁一対となって組織として対応し、庁内の役割分担を明確化することが必要となる。
クレーマーとの面談は複数で行い、担当職員の気持ちを支え、一人で悩ませないようにすること、暴言、暴力等に対しては警察や弁護士との連携を行うことが重要である。また、庁舎内における禁止行為のポスターの掲示(違反した場合には、庁舎への立ち入りを拒み、又は庁舎からの立ち退きを求めること若しくは必要な措置をとることを命じることを明記する。)が有効である。
クレーマー対策の基本として、クレーマーの出現は必然的であることを庁舎全体で 理解する必要がある。私の経験では、職員個人の対応が悪かったからクレーマーが出現したわけではなく、クレーマーは、最初から言いがかりを付けるつもりでいるのである。クレーマー出現が自治体にとって恥ではない以上、クレーマーとの交渉の中では、マスコミ報道や、裁判になってもかまわない姿勢を示すことが有効である。クレーマーは、水面下で話を付けたがり、表面化することを嫌うので、自分からはマスコミに持ち込むことはない。問題が表面化して最も困るのはクレーマー自身なのである。
ウ よくある質問の中に、クレーマーから、「誠意を見せたいなら、そちらから来い!役所に呼び出すとは何事だ!」と言われる場合の対応がある。しかし、対応する場所は、市の場合には原則として、市役所庁舎とすべきであり、相手方の要求に応じる必要はない。何故ならば、公務は役場庁舎内で行うのが原則であるが、対応場所について法律上の定めはないので、相手方の要求に応じる必要はないし、不測の事態に備えるためには市役所内がベストであり、いつも執務している場所で対応することによる精神的優位性が保たれ、録音、録画がしやすいからである。相手方の自宅は絶対にNOである。
クレーマーへの対応は複数で行うことが必要である。常に相手方よりも多い人数で対応することが必要である。①応対係②会話の記録係③制止係④緊急時の通報係 として役割分担を確認し、職員相互の連携が必要であるし、緊急時に応援体制が可能となる体制作りが必要である。職員が、自分一人で解決しようなどとは間違っても思わないように、上司への報告、上司からの指示待ちを徹底するように、日頃から職員に対してクレーマー対策の意識と知識を浸透させることが重要である。
なお、記者会見とは異なり、クレーマーへの対応は、首長自らが行ってはならない。市長自らが対応すると、クレーマーはつけあがるし、あちこちで「〇〇市長と面談して、約束してもらった!」などと虚偽の事実を吹聴して歩く可能性が高いからである。自治体という組織で対応し、首長個人の問題ではないことを、クレーマーに理解させるためには、部下が対応すべきなのである。
-
ア リスクマネジメント
- 地方公共団体をめぐる紛争と解決手続
地方公共団体をめぐる紛争と解決手続 都道府県や市町村などの普通地方公共団体、特別区・地方公共団体の組合・財産区・地方開発事業団などの特別地方公共団体は、いずれも公法人として、それぞれ、本来の行政主体としての目的に対応した行政的活動を行っているが、私法上の取引の当事者として経済的活動を行い、私人と対等の立場に立って契約や手形行為などの活動も行っています。
このような地方公共団体の諸活動に伴い、例えば行政的活動では、誤った課税処分を行うとか、公金の違法な支出を行うなどによる行政上の紛争が生じたり、また私法的活動では、公有の土地や建物の賃貸借契約上のトラブルとか公立学校内での事故に伴う紛争とか公立病院での医療ミスに伴う紛争などの民事上の紛争が、日常しばしば発生しています。
このような紛争を解決するための手続として、私的活動に伴う紛争に対しては、民事訴訟があり、行政的活動に伴う紛争に対しては、行政争訟があります。 - 民事訴訟
地方公共団体が、私人と対等の立場で社会的活動を行うことに伴って発生する紛争を解決する手続には、民事訴訟とその他の関連手続があります。
民事訴訟とは、民事に関する訴訟であり、「私法の規律する対等者間の経済上の生活関係に関する事件について、裁判所が私人間の紛争又は衝突に対して、法を適用することによって解決するため、これについて対立する利害関係人を関与させて行う法律的手続」をいいます。 - 民事訴訟の内容
事件の性質別に分けると損害賠償請求訴訟、不動産訴訟、その他に分けることができます。
損害賠償請求訴訟は、地方公共団体の民事訴訟のうちでも比較的事件数の多い訴訟です。
損害賠償請求訴訟の内容には、公立学校の教師の教育活動に件って発生する学校事故に関する訴訟(例えば、いじめ訴訟)とか、公立病院の医師の医療過誤に伴う訴訟とか、河川・道路など営造物の設置・管理の瑕疵に関する訴訟など、実にいろいろな内容のものがあります。
次に、不動産訴訟の内容には、公有地の不法占拠者に対する土地明渡訴訟とか、公有地と民有地の境界確定訴訟とか、公営住宅の家賃滞納に伴う建物明渡訴訟などがあります。これらの訴訟では、民法をはじめ公営住宅法等の実体法が関係しています。 - 行政争訟
地方公共団体の行政的活動に伴って発生する紛争を解決する手続としては、行政争訟があります。
行政争訟とは、広く行政上の法律関係に関する争訟をいい、裁断する機関によって、裁判所がこれに当たる場合の行政訴訟と、行政機関がこれに当たる場合の行政審判とに分けることができます。行政審判の主なものには、行政不服審査法に基づく不服申立制度(審査請求、異議申立など)があります。 - 行政訴訟の内容
行政訴訟は行政上の法律関係に関する争訟であり、行政事件訴訟法では、抗告訴訟(3条)、当事者訴訟(4条)、民衆訴訟(5条)、機関訴訟(6条)に分類しています。
抗告訴訟は、行政訴訟のうちでも最も中心となる訴訟であり、地方公共団体をめぐる抗告訴訟には、地方税の課税処分の違法を理由にその取消しを求めるなどの税務訴訟とか、職員の懲戒処分の取消しを求める訴訟など、広く行政活動全般にわたる事案について発生する訴訟です。
当事者訴訟の内容としては、土地収用に伴う損失補償額の増額を求める訴訟などがあります。
民衆訴訟は、住民訴訟、選挙の効力を争う選挙訴訟(公職選挙法203条、204条)などが代表的なものです。
機関訴訟は、地方自治法の代執行関係訴訟(法245条の8第3項)などがあります。
- 住民訴訟が増えた一番大きな理由は?
(1)情報公開制度ができた結果、住民が、かなりの資料を手に入れることができるようになったこと
(2)住民の権利意識の拡大
(3)平成16年に改正になった行政事件訴訟法に基づく取消訴訟というのが、改正までは非常に訴訟要件が厳しくて扱いづらいものであり、その補完機能を果たした。
- 住民訴訟の実質的意義
住民が、住民監査請求を起こし、そこで監査委員の判断如何により、直ちに訴訟に移行可能なので、勝ち負けは二の次で訴えが提起され(訴えを提起された側にとっては大変なストレスとなり、特に平成14年の地方自治法改正以前は、自治体首長個人が被告とされていたので精神的にも経済的にも負担が大きかった。)、判断経過を訴訟の中で明らかにさせることが可能になります。
その結果、住民側からすれば財務会計上の行為という切り口から、行政の適法性を確保していくことが可能になり、逆に行政側からいえば、何か判断するときに、最終的に住民監査・住民訴訟で、損害賠償の対象になるかならないかを常に意識せざるを得ず、財務会計上の行為が適法であるように努力がされております。 - 債権管理等について
債権は、公債権と私債権に分類されますが、強制徴収が可能な税金等の公債権については、地方税法、国税徴収法などの徴収手続きが定められており地方公共団体が回収について特に不安を感じることは比較的少ないといえます。
それに対して私債権については、最終的には裁判所を通じて回収する以外に方法はなく、裁判所というところは自治体職員にとっては馴染みが薄いため、どうしても私債権の回収手続きに着手しづらいというのが現実です。
しかし、公営住宅の賃料、公立病院の診療費、学校給食費など私債権の未収額の増加は自治体財政に深刻な影響を及ぼしており、少なくとも「支払能力はあるのに支払わない住民」に対しては、公平の見地からも積極的に回収手続きを行っていくべきであると考えますし、公営住宅については、公営住宅入居を希望しながらも空きがないために待っている住民のためにも、支払能力があるのにもかかわらず、あえて支払いを滞らせている不誠実な入居者に対しては明渡しを求めなければなりませんが、弁護士からみると、上記いずれについても各自治体の対応は不十分であって改善努力が必要と考えます。 当事務所は、札幌周辺のみならず北海道全域の市町村からの公営住宅明渡しや債権回収のご相談、ご依頼に対応させていただいております■公営住宅明渡についての詳細はこちら
- 主な担当事件
当事務所では、住民訴訟、行政訴訟、不服申立事案などの行政争訟と損害賠償請求事件、公営住宅明渡請求事件などの民事訴訟事件について、これまで多くの自治体の代理人となっております。文献等に登載されている主な事件は以下のとおりです。
- 幌延町貯蔵工学センター立地推進活動事業補助金住民訴訟事件
札幌高裁平成9年5月7日判決
掲載文献:判例地方自治168号9頁
- 町そば焼酎公社出資金住民訴訟事件
釧路地裁平成10年2月17日判決
掲載文献:判例地方自治180号98頁
- 公衆浴場対策補助金等支出損害賠償請求住民訴訟事件
旭川地裁平成13年11月13日判決
掲載文献:判例地方自治229号26頁
- 社会福祉協議会補助金住民訴訟事件
札幌高裁平成16年7月15日判決
掲載文献:判例地方自治265号31頁
- 競争入札参加指名停止処分取消請求事件
札幌地裁平成17年2月28日判決
掲載文献:判例地方自治268号26頁
- 議員辞職勧告決議名誉毀損損害賠償等請求事件
札幌地裁岩見沢支部平成17年4月7日判決
掲載文献:判例地方自治270号10頁、判例時報1918号39頁
- 職員イベント派遣損害賠償請求事件
札幌地裁平成17年7月22日判決
掲載文献:判例地方自治278号47頁
- 時間外勤務手当等請求事件
札幌高裁平成19年9月27日判決
掲載文献:労働法律旬報1662号55頁
- 議員辞職勧告決議による名誉毀損損害賠償請求事件
札幌地裁平成19年12月12日判決
掲載文献:判例地方自治306号15頁、判例時報2006号93頁
- 戸籍等の誤記載に係る損害賠償請求事件
東京地裁平成19年12月20日判決
掲載文献:判例地方自治306号10頁
- 除雪作業中の事故に係る損害賠償請求事件
旭川地裁平成19年12月26日判決
掲載文献:
判例地方自治306号91頁、判例時報2003号98頁、
判例タイムズ1282号219頁
- 札幌市公立学校教員ストライキ懲戒処分取消請求事件
札幌地裁平成20年7月7日判決
掲載文献:判例地方自治311号61頁
- 診療報酬不正受給損害賠償請求事件
函館地裁平成21年1月9日判決
掲載文献:判例地方自治319号35頁、判例タイムズ1306号273頁
- 国家賠償請求事件
釧路地裁帯広支部平成23年3月24日判決
掲載文献:判例時報2112号103頁
鳥獣保護法所定の従事者証の返納を命じた町長の行為、その行為に対する町の報道機関への告知行為、従事者証の返納に関する質問に回答しない行為を違法として求めた国家賠償請求が棄却された事例
-
国家賠償請求事件 札幌地裁平成23年7月27日判決
掲載文献:判例時報2141号96頁 判例タイムズ1373号167頁
町民が町立中学校のグランドに入り込み鉄棒で前回りをした際、鉄棒が支柱から外れ落ちて落下し受傷した事故について示談が成立していたが、12年後に症状が悪化したことから求めた損害賠償につき町民がグランドに入り込んだことや受診の遅れ等を理由に過失相殺をすべきではないとされた事例 -
国家賠償請求事件 札幌地裁平成24年3月9日判決
掲載文献:判例時報2148号101頁
道立高校の生徒が柔道部の合宿中に他校の生徒と練習試合中に頭部を強打して重篤な後遺障害が残ったことについて学校側に練習試合に出場させた責任を認めた事例 -
国家賠償請求事件 旭川地裁平成24年6月12日判決
掲載文献:判例時報2157号79頁
町議会の元副議長が聴覚障害年金の取得に関して、同町長及び町職員による質問及び調査によりプライバシーを侵害されたとして町に対して求めた国家賠償請求が棄却された事例。 -
懲戒免職処分取消請求事件 旭川地裁平成23年10月4日判決
掲載文献:判例地方自治361号16頁、判例タイムズ1382号100頁
万引きをして現行犯逮捕され、新聞報道された町職員に対する懲戒免職処分が、犯行の態様及び逮捕後の対応などを考慮すると、懲戒権の濫用とは認められず、また、懲戒免職処分に付した場合には被処分者に告知、聴聞の機会を与えるべきであるが、本件では弁明する機会は十分与えており手続違反はないとして原告の請求が棄却された事例 -
損害賠償請求事件 札幌地裁平成25年2月15日判決
掲載文献:判例時報2179号87頁
道立高校2年の生徒がインターネットに不適切な書き込みをし、同高教諭より事情聴取、叱責を受けた上で停学処分となった直後に自殺した事故につき、事情聴取の内容が違法であるとまでは認められないこと、停学処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとは認められず違法性があるとはいえないとして、遺族が求めた国家賠償請求が棄却された事例。 -
使用許可処分取消請求控訴事件 札幌高裁平成24年5月25日判決
掲載文献:判例地方自治370号10頁
町長が温泉付き宿泊施設等に対してした行政財産目的外使用許可処分は、使用料減免処分と一体の関係にあり、住民訴訟の対象となる財務会計行為に該当するが、当該処分に係る町長の裁量権の行使に逸脱又は濫用の違法はないとされた事例 - 損害賠償請求事件 札幌地裁平成25年6月3日判決
掲載文献:判例地方自治381号58頁、判例時報2202号82頁
小学校の設置者である町に対して、担任教諭による違法な指導により児童が自殺した等として国家賠償を求めた事案について、担任教諭の指導に違法性は認められないとした上で、自殺した児童の保護者から、自殺の原因についての報告を求められた場合、学校設置者は、信義則上、在学契約に付随して、当該児童の保護者に対して、調査義務に基づいた結果を報告する義務を負うところ、上記義務違反があったとして、原告らの請求が一部認められた事例 - 損害賠償請求事件 札幌地裁平成25年10月28日判決
掲載文献:判例地方自治381号81頁、判例時報2212号65頁
公共下水道工事によって建物の不同沈下が発生したとして損害賠償請求を求めた事案について、工事と不同沈下との間に因果関係はないとして、原告の請求が棄却された事例 -
懲戒処分取消請求事件 札幌地裁平成26年3月26日判決
掲載文献:判例時報2250号85頁
職員給与の減額支給措置等に反対する目的で教職員らがした争議行為への参加を理由とする戒告処分が憲法28条、結社の自由および団結権の保護に関する条約に違反せず、懲戒権の濫用にも当たらないとして原告らの請求が全て棄却された事例 -
固定資産税価格決定処分取消請求事件 函館地裁平成26年7月24日判決
掲載文献:判例地方自治394号35頁
原告が所有する非木造家屋に係る固定資産課税台帳の登録価格について、適正な時価を上回る違法はないとして、審査申出を却下する旨の固定資産評価審査委員会の決定のうち適正な時価を超える部分に対する取消請求が棄却された事例 -
無断欠勤懲戒免職処分取消請求事件 札幌高裁平成27年5月21日判決
掲載文献:判例地方自治401号35頁
(原審)旭川地裁平成26年11月26日判決
地方公務員に対する長期間無断欠勤等を理由になされた懲戒免職処分について無断欠勤は「解離性遁走」という精神疾患によるもので自由意思に基づくものではないとの元職員の主張を斥けて、処分者に裁量権の範囲の逸脱及び濫用が認められないとした事例 -
貸付金の回収不能に関する損害賠償請求事件 札幌地裁平成27年1月15日判決
掲載文献:判例地方自治402号16頁
村からの貸付金を金融機関からの借入金の繰上一括返済に充てることを告げずに村に貸付を実行させたことが村に対する不法行為に該当するとされた事例 -
札幌高裁平成27年2月26日判決
掲載文献:労働判例2016年8月1日(通算1136号)138頁
労働組合法7条は、不当労働行為として禁止される行為を1号ないし4号に列挙しているところ、これらについては別個の類型としてそれぞれの成立要件が規定されており、不利益取扱の成立要件と支配介入の成立要件が重なり合うものではなく、不利益取扱に該当することが支配介入の成立要件であると解することはできないから、処分行政庁が本件懲戒処分の労働組合法7条1号該当性を判断しなかったことは違法ではなく、本件懲戒処分が労働組合法7条3号の支配介入に該当するものとして発せられた本件命令には、不当労働行為の成否に関する認定判断を誤った違法があり、その取消を求める北海道の請求には理由があるとして、一審札幌地裁判決を取り消した事例 -
北海道市町村職員退職手当組合事件 札幌高裁平成27年9月11日判決
掲載文献:労働判例No1129号49頁
(原審)札幌地裁平成27年5月8日判決
① 懲戒免職相当の行為があったときに退職手当を原則として全額不支給とする運用方針が不合理なものということはできない以上、全額不支給処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量を付与した目的を逸脱し、これを濫用した認められるかを判断するに当たっては、処分者が運用方針に則って処分をしたといえるかどうかによることが相当であるとされた例
② 町職員だった亡Kの退職手当につき、在職中に金銭着服、その隠ぺい行為があったとしてなされた全額不支給処分について、不正行為は悪質なものと評価できるが、被害額が約18万円と結果態様として非難の程度が大きいとはいえず、被害額に比して全部支給しないことが相当といえるほどに重大な非違行為とまではいうことはできないとした一審判決が取り消され、一部不支給とすべき事情は見あたらないとして処分の取消請求が棄却された例 -
農業協同組合非出荷者助成金不交付損害賠償事件 札幌地裁平成28年3月29日判決
掲載文献:判例地方自治418号74頁
需要即応型水田農業確立推進事業の助成金の交付主体であり地域水田農業推進協議会の長である普通地方公共団体が、当該事業による助成の対象となる取組内容を記載する地域実需者連携等促進活動計画の作成及び実施を農業協同組合にさせた上で、同組合において助成対象者を同組合に出荷する者等に限定するなどした地域活動計画を作成、実施させたことが違法ではないとして、農業協同組合に「出荷していない原告らの助成金相当額の損害賠償請求を棄却した事例 -
町議会の懲罰動議提出による名誉毀損控訴事件 札幌高裁平成29年5月11日判決
掲載文献:判例地方自治423号18頁
(原審)函館地裁平成28年8月30日判決
町議会議員である被控訴人らが、別の町議会議員らによる懲罰動議提出行為によって名誉を毀損されたとする損害賠償請求の控訴審において、名誉毀損は成立しないとして、被控訴人らの請求を一部認容した原判決が取り消され、被控訴人らの請求が棄却された事例 -
札幌地裁室蘭支部平成29年6月23日判決
掲載文献:判例タイムズ1445号210頁
町議会から公共事業を受注した会社の代表者でもある同議会議員について地方自治法92条の2に該当するとした地方議会決議が知事から取り消された場合において、同決議に賛同した同議会議員の行為の国家賠償法上の違法性が否定された事例 -
村議会議員に対する資格決定の効力停止申立事件 最高裁第3小法廷平成29年12月19日決定
掲載文献:判例地方自治432号28頁・判例タイムズ1447号28頁
(原決定)札幌高裁平成29年5月29日決定
(原々決定)札幌地裁平成29年3月23日決定
村議会議員である者につき地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定がされ、その補欠選挙が行われた場合において同選挙は上記決定の効力が停止された後に行われたのであったが、同選挙及び当選の効力に関し公職選挙法所定の期間内に異議の申し出がされなかったという事実関係の下では、上記の者は、上記決定の取消判決を得ても、上記議員の地位を回復することはできないとして、原決定を破棄し、原々決定を取り消した事例 -
旭川地裁平成30年3月6日判決
掲載文献:労働経済判例速報69巻15号(通算2343号)24頁
労働基準法20条に反する解雇通知が30日経過時点で有効とされた事例 -
札幌高裁平成30年8月9日判決(上記33事件の控訴審)
掲載文献:判例地方自治446号42頁、労働判例1197号74頁
町が設置している病院に条件付きで採用され、医師として勤務していた控訴人が、条件付採用期間の勤務成績を不良と判断されて免職処分を受けたことに関し、免職処分の取消しを求めた訴訟の控訴審において、免職処分を適法として控訴人の請求を棄却した原審の判断が維持された事例 -
怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件
旭川地裁平成31年4月23日判決
掲載文献:判例地方自治458号72頁
町がJR北海道から取得した駅舎の改修工事を設計会社及び施工会社に委託したことに関し、住民が工事に瑕疵があると主張して、会社や町長らに損害賠償の支払を請求すること等を求めた住民訴訟において、一部の訴えは却下され、その余の請求は工事に瑕疵はないとして棄却された事例 -
生徒の自殺原因調査のために行われたアンケートの廃棄等に係る損害賠償請求事件
札幌地裁平成31年4月25日判決
掲載文献:判例地方自治458号28頁・判例時報2437号86頁
原告の子である高等学校の生徒の自殺について、部活動の顧問教諭らの指導等に安全配慮義務違反を認めず、また、原告に対する教諭らの説明等に調査報告義務違反を認めない一方、生徒の自殺の原因を調査するために行われた全校生徒を対象としたアンケートを廃棄したことは調査報告義務違反であると認めた事例 -
札幌地裁令和2年1月23日判決
掲載文献:判例タイムズ1474号202頁
家屋の固定資産税評価額を決定するに際して、需給事情による減点補正を行わなかったことに違法な点はないものとされた事例
- 幌延町貯蔵工学センター立地推進活動事業補助金住民訴訟事件